エムブレム戦記 第2章「白き地の黒」



イザーク最奥の隠れ里、ティルナノグよりアグストリアの居城、ノディオンを目指すセリスら一行は、途中の北国、シレジアを横断して海路でオーガヒルに渡り、南下してアグストリアへと入る方針を取った。シレジア王国はユグドラル大陸の中では帝国の支配力がきわめて小さい。帝国軍と鉢合わせになる危険を極力抑えた上での判断であった。
しかし、シレジアも既に帝国軍による襲撃を受けていたため、王家は衰退し、事実上帝国の傘下に置かれていた。帝国側が直接的な統治にはまだ至らせていない為、現在は無法地帯となっており、随所に山賊が徘徊している有様である。帝国と言う当面の脅威こそ避けられても、実戦は確実に伴う。容易に渡れる道ではないと言うことは皆承知していた。
ティルナノグを出て数日後、セリス達はイザークからシレジアに入る上での玄関口、ザクソン領に差し掛かった。既に夕闇が辺りを支配し、夜の帳が降りようとしていた為、その日はザクソン領で夜を明かす事になった。里に隠れ住んでいたセリスら一行にとって、連日の行軍は身に余るものがあったため、彼らの行軍をより効率よく円滑なものにする為、適度に休みを入れる事は必要であると、オイフェとシャナンの計らいからであった。
「ああ!もう!どうしてこう上手く行かないのよ!」
ザクソン領の、見晴らしのいい平地を陣取り、野営の準備を皆が進めている中、テントのロープの結び方に悪戦苦闘し、悪態をついているラクチェの姿があった。彼女の手元には、無造作に結ばれたロープが握られている。元々、細かい作業に関しては不器用さが目立つ彼女の性分に加え、テントの張り方など今まで教わった事すらなかった為、結び方一つに関して苦労するのも無理はないだろう。
「おいラクチェ、まだ結び終わらないのかよ。他の皆はもう終わってるぞ。」
ラクチェの呻き声に呼ばれてきたのか、周りの作業を終わらせてきたらしいスカサハが彼女の側に寄って来た。ラクチェは口惜しそうに唸りながら、しかし助けを請うようにスカサハの眼を睨みつける。
「う、うるさいわね。こんな事、やった事ないから分からないのよ。・・・スカサハ、代わりにやって。」
「全く、物には頼み方っていうものがあるだろう。お前って奴は・・・」
あくまでスカサハの前では素直になれないラクチェが、ムスッとした表情で手元のロープをスカサハに突き付ける。そんな彼女の様子に苦笑しながらも、スカサハはそのロープを受け取り、手際よく結び始めた。先程までラクチェが悪戦苦闘していたのが嘘のように、その場の結び目は形となり始める。
「・・・へぇ、スカサハ、なかなか上手じゃない。前にやったことあるの?」
自分では辿り着けなかった縄の完成図に嘆息しながら、ラクチェがスカサハに尋ねる。スカサハは突然の質問に、視線を泳がせて曖昧に返事する。
「ん?あー、まあ・・・な。慣れているって訳でもないけど、やったことはあるぜ。こんなもの、一回やれば後は体が覚えるものだからな。」
「ふーん、そういうものなんだー・・・」
スカサハの生返事を意に介する様子も無く、ラクチェはただ彼の話に頷いていた。スカサハは適当にその場を捲し立てようと、立ち上がりざまにラクチェに言う。
「そういうこと。この先、野宿も多くなりそうだし、お前も早く慣れろよ。寝床を立てられなきゃ野営はどうしようも無いからな。」
「うっ・・・分かってるわよ。それぐらい。」
立ち去るスカサハの後を追うラクチェの態度は、やはり素直ではなかった。

野営の準備が一通り終わった頃には、既に辺りは夜に寝静まっていた。時の流れに逆らう事無く、義勇軍の皆も闇の帳に各々身を沈め始める。そして、誰もがその静寂に意識を落として行った頃、セリスは一人、忍びやかにテントを出て、足音を立てぬよう神経質になりながら外へと躍り出て行った。野営地から少し離れた所まで足を運ぶと、ようやく胸を撫で下ろす。
「ふぅ・・・誰にも見つかっていないね。・・・さてと、夜明けまでに調べられる所までは調べとかないと・・・」
深夜の平原、万物が黙り込んでいる世界の中、セリスは一人そう呟いていた。
イザークからシレジアに渡り、ザクソン領を横断しようとしている現在に至るまで、セリスには一つ、気になっている事があった。それを確かめる為、夜を徹し、睡魔を噛み殺して漆黒の夜に身を乗り出したのだ。
セリスが辺りを見渡している中、ふと、こちらに近付いてくる足音が聞こえてきた。思わずセリスは足音の方向に首を向ける。
「ん・・・・・・誰?」
野犬にしては、しっかりとした、そして規則正しい歩幅と足音だったため、人だろうと即座に判断したセリスは、軽く身構えながら尋ねる。しかし、その声を聞いた瞬間に、彼のその緊張は解けた。
「やっぱりセリスか。ダメだよ、睡眠はしっかりとらないと。」
声と共に、夜の闇に紛れた実体がセリスの目の前に姿を現す。それはディムナだった。どうやら、セリスが密かに抜け出した事に気付き、こちらまでついてきたらしい。自分の後を追ってきた友人に対し、苦笑しながらセリスは歩み寄った。
「あ・・・ごめん、ディムナ。でも、ディムナこそ、休まなくて良いの?」
「うん。これからの事を考えると、しっかり休んでおかなきゃいけない事は分かっているけど・・・どうしてかな、眠れなくて。」
セリスの側に歩み寄りながら、溜息交じりにディムナが言う。セリスの隣にまで寄って来た所で足を止め、すっかり黒に染まった闇空を仰ぐ。彼が眠れない理由、それは単純に今後の戦いに対する緊張感のみから来るものではない、彼のどこか思いつめたような横顔から、セリスはそれを直感した。
「・・・・・・ねぇ、ディムナは不思議に思わなかった?」
「え、何が?」
今のディムナなら、自分の考えを理解してくれる。そんな気が漠然と起こり、セリスは知らぬ間に口を開いていた。ディムナは不思議そうにセリスの顔を覗き込む。まだセリスの問いの意図が掴めてい無いようだ。セリスは続ける。
「オイフェの話だと、シレジアも帝国からの攻撃を受けて、事実上滅亡に瀕している。当然、統治政権なんて行き届いていない筈だ。それなのに、僕達がここまで来た道の中で、帝国軍どころか、山賊の一人とも遭遇しなかった。間違いなく治安は乱れている筈なのに・・・」
「それは・・・・・・」
セリスの問い掛けに、ディムナは思わず口籠ってしまう。セリスの言う通り、既にシレジア王家が滅亡した現在、シレジアは帝国軍の傘下に置かれている。当然、大陸全土を征服する算段を立てている帝国軍が、自らの覇道を全うする途中でたった一つの国家の情勢を気に掛ける筈はない。シレジアも当然帝国に放置され、まとめる者がいなくなって治安が乱れているとばかりセリスは思っていたが、自分達がザクソン領を横断するまでの道程の中、治安の乱れに呼応して動きを活発化させる賊の一団等と全く遭遇していないのである。多少の鉢合わせを覚悟してイザークを出てきたセリスからしてみれば、安堵する一方、違和感があったのだ。
「僕の勝手な思い過ごしかもしれないけどね・・・王家が滅ぼされた今でも、シレジアの抵抗の手が完全に消えたわけじゃないと思うんだ。今でもシレジアを取り戻そうとする人達が、内からシレジアが完全に腐敗するのを防いでいるんじゃないか、って。」
返答に困り、曖昧な相槌しか打てないディムナを尻目に、セリスは続ける。ディムナは彼の推論に尾を引かれるものがあったのか、彼の言葉尻を追うようにセリスの横顔を覗き込む。
「シレジアを取り戻そうとする人達・・・?レジスタンスみたいな人達かな?」
ディムナの推測に、セリスは軽く頷く。しかし、途端に表情を緩ませて、自信の無さを取り繕いながら言う。
「まぁ、あくまで僕の推測でしかないけどね。元々シレジアにはそう言う賊団みたいな無法集団がいなかっただけかもしれないし。・・・さてと、僕は少し、夜風に当たりに散歩に行ってくるよ。ディムナ、君は戻って先に休むといい。」
ディムナに向き直り、微笑んでくるセリス。しかし、その笑顔は秘め事を誤魔化すような作られたものであり、直視したディムナに違和感を覚えさせるものであった。
「あ、うん・・・でも、あまり遠くへは行かないでね。夜は周りが見えないから、何かあっても探しに行ってあげられないよ。」
セリスの無理な笑顔を慮ってか、ディムナは彼を気遣うように言葉添えをする。セリスはやはり無理な笑みを浮かべながら、平静を装いつつ返す。
「そんなに遠くへは行かないし、あまり遅くもなるつもりはないから大丈夫だよ。・・・それじゃ、また明日ね。」
それだけ言い残すと、セリスは小走りでディムナから遠ざかっていった。走り去るセリスの後姿が、ディムナにはどこか不安げに映っていた。
(セリス・・・何かを感じているのかな・・・?)
彼の心の中での問いは、辺りに誰もいなくなった闇夜の中の風に虚しく反響するのみだった。

少し走ってから、セリスは疲労が混じった荒い息を吐き、先ほどと同じように辺りを見渡した。しかし、辺りには真っ暗に染まっている森林以外は、真っ新な平地しか広がっておらず、人影どころか、野犬の一匹も視界を過ぎらない。
「誰もいない・・・やっぱり、少し考えが都合良すぎたかな。賊の一人ともすれ違わないから、誰か独自で動いているものだと思っていたのに・・・」
数分見渡しても、変わり映えしない辺りの風景に、溜息交じりにセリスは呟く。その呟きさえ、何も無い平原の風に吹かれて何処かへ飛び去ってしまう。
セリスが夜を徹してまで確かめようと行動に転じた「気になる事」、それは正に先程ディムナに問うた内容そのものだった。シレジアは帝国に滅ぼされた。にも関わらず、自分達がここまで乱れた治安と遭遇しないのには違和感がある。何か別途で加えられている手があり、それがシレジアの乱れを未然に防いでいる。そんな気がしてならなかったのだ。
二歩、三歩と足を進め、忙しなく辺りを見渡す。しかし、セリスが望んでいる答えは依然見つかる気配が無い。だが、セリスは探すのを止めなかった。
そうして、暫く足を進めていると、何処からか遠くより馬の蹄の音が聞こえてきた。
「馬の足音・・・?一体誰が・・・」
セリスは風以外の音が聞こえる方向に敏感に耳を傾ける。音はどんどん大きくなり、やがて音の主の輪郭までもがはっきりと形となってセリスの視界に飛び込んできた。
「遠目でどこかで見た事のある人影が見えたから来てみれば・・・・・お前、セリスか!」
やがて、輪郭がはっきりと映り、色彩まで識別できる距離にまで近づいてきたその影はセリスを見て驚きの声を上げる。セリスの目の前に現れたそれは、黒く、毛並みの美しい馬に跨っている騎士然とした金髪の男であった。漆黒の騎馬に揃えるかのように、身に纏っている鎧も黒い光を放っている。
「え・・・?・・・あ、君、もしかして・・・アレス!?」
突然馴れ馴れしく名前を呼ばれたセリスは一瞬驚いたが、目の前に現れた金髪の騎士の顔を視認して、二重の驚きを込めた、しかしどこか嬉しそうな声を上げる。アレスと呼ばれた男は馬から下り、セリスに手を向けた。セリスも同じように手を向け、2人は双方の手を握り合った。
「久しぶりだな。前にシレジアに来たのは、3年ほど前か?」
「うん!元気そうで何よりだよ、アレス。」
固い握手を交わし合うセリスとアレス。セリスは以前、広く見聞を持つと言う名目で、オイフェとシャナンの計らいの下、内密でシレジアに留学していた時期があった。アレスとはその時に知り合い、意気投合して親友とも言える間柄になっていた。
「ところで、何故お前はここに来たんだ?今シレジアは帝国の息が掛かった土地と化している。安全な場所じゃ無くなった事は、お前も知っているだろう?」
お互いの手が解放されてから、改めて向き直ったアレスがセリスに問う。帝国の干渉が激しくなったこの時世、帝国の目から免れる為に隠れ里に潜んでいたセリスが今、この場にいる事に違和感を覚えたのだろう。予想していた質問に、セリスは包み隠さず答える。
「うん。実は・・・僕は挙兵したんだ。グランベル帝国軍が、遂にイザークにまで攻め込んで来て、僕らが住んでいた隠里も安全な場所とは言えなくなったから。僕らは、これからアグストリアで陣を取っているエムブレム軍に入ろうと思っている。」
エムブレム軍、と言う言葉を聞き、アレスは少し意外そうな顔をする。
「エムブレム軍にか?だが、アグストリアは今や内乱の最中。通るのは容易ではないぞ。」
アレスの言葉に、今度はセリスが意外そうな顔をし、僅かに驚いた顔で聞き返す。
「え?内乱って?アグストリアも、シレジアと同じく帝国に滅ぼされたんじゃ・・・」
セリスが言い終わる前に、アレスは真剣な面持ちでキッパリと言い放った。
「いや、アグストリア王家はまだ滅んでいない。いや、まだ、シレジアも根本から滅んだわけではないんだ。」
「根本から滅んでいない?それって、どういう事?」
アレスは神妙な表情を崩さずにセリスの顔を見る。対するセリスは動揺が混ざっている面持ちでアレスを見返した。セリスの問いに数秒の間を置いてから、アレスは答える。
「俺はここにいる間に、いくつか情報を拾って来たんだよ。その結果、いろんなことがわかった。」
「・・・話してくれる?」
真剣なアレスの表情に触発されたか、セリスも動揺の顔を真剣な色に変え、アレスの顔を見た。アレスは黙って頷くと、口を開く。
「・・・シレジアのラーナ王妃には、既に亡くなっていたシレジア王との間に、二人の御子息がいたんだ。名は王子がレヴィン、王妃がフィー。二人は王になる素質は十分にあり、王子レヴィンも次期王としての自覚はしっかり持っていたようだった。だが、レヴィン王子が王位を受け継ごうとした矢先に例の帝国軍の襲撃だ。ラーナ王妃の計らいで、シレジア城が攻められた時、レヴィン王子は付きの兵士達と共に城を抜け出したまま、行方不明になった。今、王子は生きているか、死んでいるかも分からない状態らしい。だが、もし生きていれば、シレジアはいくらでも甦ることが出来る。ということだな。」
アレスの話を、セリスは感嘆交じりに聞いていた。シレジア王子レヴィン、王としての素質を持ち、その王位継承を期待されたラーナ王妃の忘れ形見。今、ラーナ王妃は死に、その子息であるレヴィンすら生死不明の闇に閉ざされている。だが、それは生きている可能性も、死んでいる可能性も平等にあるという事である。シレジアの現在の先は全く見えなかったが、希望が完全に潰えているわけではない事に、セリスは安堵した。
だが、アレスの話の中で、一つ気になった事があり、それが彼の口からそのまま疑問として出てきていた。
「・・・でも、妹姫はまだ城に残っていたんでしょう?彼女はどうなったの?・・・まさか、ラーナ王妃と共に帝国軍に・・・?」
聞きながら、セリスは自分の声が震えていることに気が付いた。もし、自分の望まぬ答えが返ってきたら。後から不吉な考えが脳裏に過り、不安が奔ったのだ。
しかし、返ってきたアレスの答えはセリスの予想を良い意味で裏切ってくれた。
「いや、シレジアが攻められる前夜、ラーナ王妃は妹姫フィーにもシレジアを離れるよう言伝をしていたらしい。だから妹姫も行方不明、ということになるな。尤も、こっちはレヴィン王子以上に生存の望みは高いけどな。」
アレスの答えを聞き、セリスは安堵に胸を撫で下ろした。シレジア王家兄妹。顔も分からず、名前もたった今知ったばかりだが、訃報を聞いてしまえば寝覚めが悪い。何にしても、セリスは死という現実を直視する事が苦手だったのだ。
「それで、アグストリアは?」
不安と安堵に揺らいでいた心を落ち着かせてから、セリスは話を次の質問に移す。アレスは少し深呼吸をしてから、一言一句噛み締めるように言った。
「アグストリアが帝国に襲われたのはシレジアと大体同じ時期だ。アグストリア連合は軍事力ではグランベルにも引けを取らないものがあったが、諸侯連合の間で軋轢があったらしい。帝国に従うか、一国として属国かを拒むか、という意見の間でな。その所為で連合軍が上手くまとまらなかった。それが帝国軍との戦いに敗れた最大の要因だと言われている。戦いに敗れたアグストリア王家は滅ぼされ、現王であったイムカ様は亡くなられた。更に、次期アグストリア王に台頭していたエルトシャン殿も消息を絶たれた。実質統治者がいなくなったアグストリアの地に足を踏み入れたのは、グランベル帝国軍五大将軍の一人、シャガール。帝国も豊かな土地を持っているアグストリアを放っておくわけが無くてな、殊にシャガールはアグストリアに対する執着心が人一倍だった。だからこそ、アグストリア王家が滅んだ今、現在一国全土の統治権はシャガールが我が物にしている。アグストリアは支配こそされているが、完全に滅んではいない。・・・これも、エルトシャン殿が生きていればの話だがな。」
「・・・・・・・」
茫然としたまま、セリスはしばらく言葉が出て来なかった。アレスはセリスの顔を見て、今までより一層表情を険しく、そして真剣なものに変えた。
「これで分かっただろう?エムブレム軍に加わると言うことは、アグストリアを征服している帝国軍と接触することに繋がる。お前らは苦戦を強いられるだろう。最悪の場合、敗北するかもしれない。・・・それでも、お前は行くのか?」
セリスはアレスの言葉に動揺し、彼の顔を見る。その顔には現実を直視した上での鋭さが湛えられていたが、同時に、旧友の身を案じる一人の青年としての顔も垣間見えた。元々、感情を素直に表現する事の苦手な男だった事を思い出し、驚いた顔をすぐに決意の顔に変える。アレスに促されるまでも無く、既にセリスの結論は決まっていた。
「・・・うん。それでも行くよ。いつまでも立ち往生していても、何も始まらないから。これからの世界の為に、出来る事をやらなきゃ。」
何処までもまっすぐなセリスの瞳を、アレスはまじまじと見つめていた。自分には無い、何処までも澄んだ瑠璃色の瞳。三年程度の年月では、彼のこの性格は変わらない。アレスはそう悟ったらしい。
「・・・三年前と変わらないな、お前も。」
溜息交じりにそう零すアレスだったが、その顔には僅かに笑みが浮かんでいた。だが、それも一瞬の事で、ふと、何かを思い出したかのように表情を再び引き締めた。
「これからの世界の為・・・か。セリス、お前が帝国に本気で立ち向かう気でいるなら・・・俺に付いて来い。お前に見せたいものがある。」
「僕に見せたいもの?」
セリスは目を丸くしてアレスの顔を見る。彼の顔は真剣そのものである。少なくとも、愉快な話題では無さそうだ。だが、今のセリスにそれを断る理由も無かった。
セリスは黙って頷くと、先を歩くアレスの後を付いて行くことにした。

「これは・・・」
アレスに連れられてセリスがやって来た所は、廃墟だった。
辺り一面が焦土と化しており、地面は無残な灰色に染まり切っていた。随所随所から立ち込める僅かな煙が、まだ燃え尽きて間もない事を如実に表している。
辺りには人一人いない。確かにそこにあった筈の時間が、完全に止まってしまった空間。生命の息吹も、大地の鼓動も、何もかもが物言わぬ亡骸と成り果てた地。それが、今セリスの目の前に広がっている悲しき大地の姿だった。
「これは・・・・・・なんて・・・」
セリスが今目にしているもんは、彼に問って想像を遥かに絶するものであった。それ故に現実味が湧かなかったが、所々に見られる木切れや、完全に炭と化した布きれなどから、そこがかつては村であった事を彷彿させられ、同時に現在、目の前に露呈されている景色の残酷さに辟易とした。
「酷い、と思うか?」
余りに衝撃的な光景に、声も碌に出せないセリスが、ようやく戦慄きながら紡ごうとした言葉に続けるように、アレスが横から口を挟んだ。セリスはアレスの言葉に肯定も否定もせず、ただ目の前の焦土に目を釘付けにされていた。
だが、アレスもセリスの返事を期待していたわけではないらしく、彼の反応を意に介する事も無く続ける。
「だがな、セリス。これは奴ら・・・帝国軍からしてみれば半ば常套手段にも近い非道だ。奴らは自分達の力や存在を正当化する為なら手段を選ばない。自分達に逆らう者ならば、たとえそれが無力な民でも、平然と手に掛ける。・・・この廃墟は、シレジア侵攻の際、帝国軍への物資供給を断った為に犠牲となった村の成れの果てだ。」
「ここが・・・・・・村・・・?これが・・・・・・帝国のやり方・・・?」
信じられないとばかりに徐にアレスへと視線を移すセリス。今まで人を自らが殺めるどころか、見たことすら無いセリスにとって、その光景は凄惨たるものだった。かつては活気に満ちていただろう村落。それがたった一つの軍隊の意思で、嘆きの焦土と成り果てる。シレジア侵攻の際、ここで行われた惨殺を想像し、セリスは吐き気を覚えた。
「これが、帝国のやり方だというのか・・・・・こんなこと・・・・・・・」
焼け焦げた風の匂いが、セリスには強烈だったのか、骨抜きにされたように崩れ、その場に膝をついてしまう。アレスはそんなセリスの肩に手を置きながら、諭すように言った。
「覚えておけ、セリス。お前がこれから戦おうとしている帝国軍は、こういう奴らだ。人の情など、あって無いような連中ばかりだ。・・・だから、今の内に割り切っておけ。帝国軍がお前の目の前に現れた時、迷うことなく剣を振れるようにな。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
セリスはアレスの言葉に黙って頷く。掴まれた灰が、セリスの手を滑り落ち、静かな音を立てながら焦土に落ちていく。手から零れ落ちるこの灰のように、帝国軍は容易くここに住んでいた人々の命を奪っていったのだろう。慈悲など全くない非道な集団を、許すわけには行かなかった。
その時、アレスが何かに気が付いたのか、咄嗟に立ち上がり、辺りを見渡し始めた。反射的に、且つ迅速な反応から、只事ではない事を察知し、セリスもつられて立ち上がる。
「誰だ!?」
不意にアレスが声を張り上げる。その声には確かな緊張感が漂っていた。セリスもアレスに倣い、辺りを見渡してみる。だが、人影らしきものは見当たらない。長い間隠れ里に住んでいたセリスと違い、有事に於ける気配に敏感なのだろう。アレスの感覚を頼りに、目を凝らし、耳を澄ましてみると、僅かだが羽音らしき空気の震えが伝わってきた。
「羽音・・・?でも、こんなに大きな羽って、一体・・・」
「ここに俺以外の人間が訪れていたとは・・・これは、些か迂闊だったか・・・だが、気付かれたからには姿を見せよう。それがせめてもの礼儀だからな。」
突然届いたその声に、二人は一斉に同じ方向へ振り向いた。見ると、そこにはその場には似つかわしくない、豪快で悠然とした、その存在を如何なく主張している存在があった。堅牢な鱗に身を包み、尊大な両翼を広げ、夜の空気を震わせる恐怖の古代生物。ユグドラルの古代史にもその名を連ねる、「竜」だった。その中でも、大陸でも少数と言われる竜騎士団に駆られる飛竜種と呼ばれる竜だった。飛竜が咆哮を上げたかと思うと、その陰から出てくる男性の姿があった。年齢は二十代後半で、蒼の長髪を後ろで結い、黒の鉢巻で頭を締めている男性だった。漆黒の鎧の肩部に刻まれた紋章が、彼を一国の騎士団の人間であることを示している。
「・・・お前は一体何者だ。こんな所で何をしている。」
アレスは目の前に現れた男を訝しげに見つめながら、隙を見せまいと落ち着いた口調で尋ねる。対する蒼髪の男も至極落ち着き払った態度で、睨みつけるアレスの視線を黙殺し、彼の問いに答える。
「俺の名はゲイル。帝国連合の一つ、神聖ベルン王国の「三竜将」の一人だ。」
「・・・・帝国・・・連合・・・?」
蒼髪の男、ゲイルの名乗りを確かめるように、セリスが静かにその言葉を繰り返し、反芻する。四大陸間で結ばれていると言われる帝国連合。その内、エレブ大陸でその猛威を振るっている神聖ベルン王国。今、自分の目の前に立っている男はその帝国軍の騎士だと言う。それも、ベルン軍の中でも指折り数えられる程の実力者である、「三竜将」の一人だと。重ねられた二つの事実が、セリスの頭の中で大きく渦巻いた。
大陸を征服せんと画策する帝国連合。自らの力を誇示し、その存在と脅威を知らしめるためならば如何なる手段をも厭わない極悪集団。その将軍たる存在が、自分の目の前に立っている。
「帝国軍が・・・ここに・・・帝国が・・・ここに・・・・」
セリスの心が次第に黒く染まって行く。帝国軍相手に情けは無用。躊躇いなくその剣を振るう事こそが何よりの正義だ。戦いを知らず、平和を望むセリスらしからぬ黒い考えが、彼の頭の中を支配していった。そして、その考えは行動として間もなく現れる。
「・・・・帝国軍・・・お前が・・・お前達が・・・っ、うああああああああああああああああああああああああああああ!」
憎悪、当惑、恐怖。様々な負の感情を募らせたセリスは、遂に自分を制御し切れなくなり、気が付くと、剣を抜いて、ゲイルに一直線に向かっていた。
「な、セリス!無茶だ!止せ!」
恐ろしい形相で突進していくセリスを、慌ててアレスは止めようとするが、彼の制止すら聞こえていないかのように、セリスの眼には立ち尽くす帝国将軍しか映っていなかった。
「こいつが・・・こいつが村の人達を!よくも、よくもっ!」
自制が利かなくなったセリスは、手にした剣を一直線にゲイルへ振り下ろす。どうやらセリスは、彼が帝国将軍である事を名乗った瞬間に、この村を襲った元凶がゲイルであると錯覚してしまっているらしい。根拠のない自らの勝手な推論を盲信し、目の前が見えなくなってしまっている。セリスの心は錯乱していた。
「成程。俺が帝国の人間だと知って向かってくるか。その勇猛ぶりと覚悟は褒め称えよう。だが・・・」
ゲイルは飛竜の背に忍ばせていた槍を取り出し、セリスが振り下ろすより先に彼の剣を叩き落とした。相手が呆気にとられた一瞬の隙を見逃さず、槍の柄でセリスの胴を小突く。
「・・・・っ!」
僅かな衝撃に、セリスは尻餅をつく。一瞬の出来事に怯みを見せるが、尚も立ち向かおうと腰を上げかけた彼の喉元に槍の刃先が突き付けられる。
「勇気と無謀は違う。・・・そして、覚悟とは命を捨てる決意を固める事では無い。」
「くっ・・・」
喉元に刃が僅かに当たり、少しでも動けば鋭い鉄が喉を掠める。鋭刃と零距離にあるセリスは満足に顔を背ける事も出来ず、ただゲイルの顔を睨みつける事しか出来なかった。目の前の男がその気になりさえすれば、セリスの首は容易く掻っ切られるだろう。それでも、セリスの眼には恐怖も諦観も映っていなかった。
「・・・・・・・僕は。」
「・・・・・?」
追い詰められたセリスが、小突かれた事で幾分か冷静になれた思考の中で言葉を紡ぎ、ゲイルの眼を見据える。その眼は、命の危機に晒されている者とは思えない程、決意に満ちていた。
「僕は、絶対に負けない。お前達帝国軍には・・・絶対に、負けない。」
帝国将に追い込まれたこの状況で言い放つには、あまりに滑稽な空論。ゲイルが、アレスの言うような人の情に欠けた、極悪非道な帝国人そのものだとしたら、そう聞こえただろう。だが、その時、ゲイルには、セリスの身体から僅かに放たれる柔らかい輝きが見えていた。その光は、セリスの身体に保護色するような淡い青色で、端から見ても誰も気付かない程に存在感を潜めていたが、ゲイルには確かに見えていた。視覚と言うよりも、知覚で感じ取っていた。セリスから不意に垣間見えた光。その存在が、ゲイルにとって何よりの、セリスの言葉の証明と為り得ていた。
「・・・光?・・・・ふっ、成程。そう言う事か。ではお前も・・・」
「え・・・・・・・・?」
ゲイルの僅かな微笑を、セリスは見逃さなかった。その微笑みは、セリスを見下す嘲笑ではなく、優しさが込められているような、暖かな笑みだった。セリスは狐につままれたような目でゲイルを見ていた。血も涙も無い、悪逆非道な帝国軍人と言う先入観が、彼の中で剥がれかけていたのだ。
「良いだろう。ここは、お前への敬意の意味も込めて、俺は退こう。・・・お前とはまた会える気がする。それまでに死ぬなよ。」
ゲイルはセリスに突き付けていた槍を手元に戻すと、再び飛竜の背中の革袋にしまい込む。そのままの足取りで飛竜の背中に跨り、飛び去ろうとする。
「あ、待って!」
飛竜が大地を蹴り、翼を羽ばたかせて空に舞おうとした正にその時、セリスはゲイルに向かって叫んだ。ゲイルは両手に持った手綱を振り上げた手を静かに下ろしながら、セリスに視線を向ける。
「何だ?」
「・・・・・「三竜将」、ゲイル殿。あなたのその為人・・・とても帝国の意向に則った物とは思えません。一つだけ教えて下さい。この村を襲ったのは・・・」
そこまで聞いて、セリスが何を問おうとしているのか分かったのだろう。セリスの問いを最後まで聞くことなく、ゲイルは彼の言葉を遮って言った。
「誤解の無いように言っておくが、シレジアを襲ったのは、グランベル帝国の意志一つだ。他の帝国連合は、全く関与していない。・・・それが免罪符になるとも思っていないがな。」
「・・・やっぱり・・・先程の非礼、どうかお許しください。」
先程までの自分の言動を思い出し、申し訳なさげに頭を下げるセリス。その時は帝国軍に対する先入観があった為、やむを得ないとは言えども、自分の軽率さが居た堪れなかったのだ。
だが、ゲイルは特に気にしていないようで、優しい笑みをセリスに向けながら言った。
「帝国連合を恨む者は大勢いる。帝国を憎むも、俺を憎むも、あながち違いは無い。・・・ではさらばだ。また会おう。」
それだけ言うと、ゲイルは手にした手綱を振り下ろした。飛竜はそれに呼応し、大地を蹴って空へと飛び立つ。そのまま一途、ベルンの地へと飛び去って行った。
また会おう―――セリスには、その言葉の意味が分からなかった。というより、意味を考える余裕が、今の彼には無かったのだ。帝国将軍、ゲイルが去った事により、命の無事と緊張の弛緩で、心の箍が緩んだのか、不意に異様な疲労感に襲われ始めた。足元が覚束なくなり、辺りの景色も歪んで見えるようになる。
「あの男・・・不思議な奴だったな。実力もそうだが、何処か・・・帝国には似つかわしくない雰囲気を持っていた、というか・・・」
アレスが声を掛けてきたが、セリスにはそれは耳に届かなかった。ふらついた足は、やがて平衡感覚を失い、その場に崩れ落ちる。
「セリス・・・?おい、セリス!しっかりしろ!」
セリスの異常に気付き、アレスが声を上げながら彼に駆け寄る。だがセリスはその声に応えず、やがて意識も朦朧としていく。
「どうしたんだ、セリス!おい、しっかりしろよ!」
必死に呼び掛けるアレスの努力も虚しく、セリスの瞼は閉ざされ、完全に彼の意識は闇に落ちて行った。

暗い闇の中、他に誰もいない、何も聞こえない、何も見えない、全くの無の空間に、セリスは一人、立ち尽くしていた。
自分は今まで、何をしていたのだろう。何故こんな所にいるのだろう。目を開けても全く変わらない光景に、セリスは疑問ばかりが募っていったが、そのどれも解決される事は無く、ただ一方通行に時は流れていく。
暫く、闇の流れに身を任せていると、不意に頭に、何者かの声らしきものが響いてきた。耳から伝わり、音声として響くのではなく、頭の中で直接反響したのである。
(・・・リス・・・・ドの・・・いよ・・・・)
言葉が途切れ途切れで、何を言っているのかがセリスには分からかった。思わず両耳を塞ぎ、頭の中に響き続ける残響音に全神経を集中させる。
(・・・うせよ・・・の力を・・・)
上手く繋がらない言葉の中で、力、という単語のみははっきりと拾う事が出来た。しかし、その意味までは正確に捉える事が出来ない。力。見ず知らずの声が、突然自分に語り掛けた言葉。一体何を示した上で自分に語り掛けているのだろうか。セリスには声の主の意図が全く掴めなかった
―――――――――――――リス!セリス!
その時、遠くから誰かの声がセリスの耳に入ってきた。どうやら自分を呼んでいるらしい。その声に引き付けられるように、辺りの視界から闇が払われ、セリスの意識も引き戻されていく。
「セリス!起きろ!」
その声が決め手となり、セリスは目が覚めた。
「う・・・ん・・・・・あ、アレス?」
現実に引き戻されたばかりで、未だはっきりとしない視界と意識の中で、セリスが真っ先に目の前に映った青年の名を呼ぶ。アレスはセリスが目を覚ました事に心底安堵したように溜息をつくと、それまで強張っていたのだろう表情を緩ませた。
「気が付いたか。あの竜騎士が去った途端に崩れ落ちた時はどうしたのかと思ったぜ。」
そこまで言うと、アレスはセリスの上半身を起こさせ、自身もセリスから離れる。セリスはいくらかはっきりしてきた意識を起こし、自分の足で立ち上がると、徐にあたりを見渡し始めた。まだ明け方には遠い漆黒の闇が辺りを包んでいる。どうやら、気を失ってからそれ程時間は経っていないらしい。
「あの竜騎士・・・ゲイル・・・」
先程出会った竜騎士の名を、セリスは小さく呟いてみる。自分がそれまで抱いていた帝国兵の印象とはかけ離れていた男。会ってから数分しか言葉を交わさなかったが、少なくとも、あれ程の男が、自分がそれまで思っていたように殺戮を愉しんでいるとは思えない。では何故、彼は帝国軍にいるのだろう。疑問は浮かぶ事はあれど、消える事は無かった。
だが、いつか彼とはまた会うかもしれない。セリスはそんな気がしてならなかった。だから、今はその疑問は胸にしまっておこう。そう決心した。
「それにしても・・・まさかエレブ大陸の帝国軍が他大陸にまで侵入してくるとはな。これは・・・俺が思っている以上に帝国の動きは早く進んでいるのかもしれない・・・」
「アレス・・・?一体どうしたの?またいきなり考え込んじゃって。」
一人、顎に手をやりながら考える素振りを見せるアレスを、キョトンとした顔でセリスは眺めていた。アレスは暫く黙り込んでいたが、やがて意を決したように顔を上げ、セリスと目を合わせる。突然飛び込んできたアレスの真剣な眼差しに、セリスは一瞬たじろぐも、すぐに持ち直した。
「セリス、どうやら帝国軍と一口に言っても、お前達が戦うべき相手は最早グランベル帝国に留まらないかもしれない。もう一度聞く。それでも、お前は行くのか?」
アレスの眼は、これまで見せたどの表情よりも真剣に輝いていた。その眼の輝きに込められた思いを悟ったのか、その瞳を真剣に受け止め、セリスはゆっくりと、だがしっかりと頷いた。セリスの、断固とした決意を受けて、アレスはゆっくりと瞳を伏せた。
「そうか・・・だったら、俺もその手伝いをさせてもらうかな。セリス、俺もお前と一緒に行こう。一緒に戦わせてくれ。」
突然の、それも意外な申し出に、セリスは今度こそ不意を突かれたように驚き、目を丸くした。
「え・・・?それは願っても無い事だけど・・・でも、いいの?君が言っていたように、僕達が目指している場所は凄く危険だって言うのに・・・」
一歩退いて、セリスは躊躇うように言う。アレスの実力は、シレジアに来た時に彼も体感している所であり、一緒に戦ってくれる分には問題ない、寧ろお願いしたいくらいであったが、先程アレスが指摘した通り、エムブレム軍へ加入する為の道程はとても厳しいものになる。入る前も入った後も、危険が後に続く戦いを強いられることになるのだ。そんな危険な境地に、果たして親友を連れて行っていいものか、セリスは迷っていたのだ。
だが、セリスの言葉を、アレスは首を振って否定する。
「俺の強さはお前も知っているだろう?それに、お前がいなくなった後も、荒れたシレジアに横行していた山賊共を相手にしてきたんだ。実戦経験はお前達よりも遥かに上さ。・・・それに、お前を放ってなんておけるかよ。親友が危険な場所に行こうって言うのに、俺だけ指を咥えて見ているなんて、そんな事は絶対に御免だ。」
聞きながら、セリスはアレスの行動力に感心し、また、友としての気遣いに感謝していた。シレジアが帝国に滅ぼされたにも関わらず賊による横暴が働いていなかった理由、それが今、アレスの尽力の賜物だと知り、改めて彼の実力の高さを痛感した。そして、それ以上に、自分の事を親友と思い、気に掛けてくれている事が何よりもセリスには嬉しかったのだ。
アレスの断固とした決意。それはセリスが何を言っても揺らぐことは無いだろう。そして、今のセリスにその決意を揺さぶる理由も何も無かった。
「・・・・・・君がそう思ってくれているなら、とても頼もしいよ。アレス、是非、僕達と一緒に来てくれ。一緒に大陸の平和の為に戦おう!」
「・・・ああ、これからよろしくな、セリス!」
セリスが徐に差し出した右手を、自らの右手で握り返すアレス。しっかりと交わされた握手は、彼らの不動の友情を物語っていた。

漆黒の闇が緩み、空が白んでくる。夜が身を潜め、新しい朝が再び世界中を照らす。
セリス達は新しい仲間、アレスを加えて、再びアグストリアを目指して、シレジアの地を横断し始めた。

続く



























あとがき
こんにちは。二話まで書きました。続く限りむりせず頑張ります。
スカサハ「なんか、セリスからのご指名で来たけど、何処だここ?」
お、今回はスカサハが来てくれたか。
スカサハ「ん?アンタ誰?」
アンタとは失礼な。俺は一応この話の作者だぞ。
スカサハ「ふーん、じゃあここで俺の愚痴も聞いてくれると言うことだな。」
え?愚痴?何で?君他の人よりは出番多い方じゃん。
スカサハ「何で俺とラクチェの会話は全部コメディ系なんだよ!ああいうのはパ●●とかラ△とかの仕事だろ!?しかもそのコメディ会話でなんで俺はつっこみ兼下手れ役なんだよ!」
凄いね、君。色んな意味で。まあいいや。あのね、前回セリスも言ったことだけど、話って言うのは、ガチで真面目な話でなければ全部シリアス!100%シリアス!熟シリアスー!なんてことしたらみんな飽きちゃうでしょ?だから少しでもコメディを増やそうとしてるのよ、お分かり?
スカサハ「そりゃ、ユーモアも必要なことくらい、俺も知ってるけどよ、なんでその役回りが俺なんだ?」
それは、ディムナ兄妹を除けば、今のところ兄妹参戦してるの君達だけだし。
スカサハ「ん?まあそうだけど・・・でも・・・」
じゃあ君に聞くが、セリスとアレスが漫才できると思うか?」
スカサハ「アレスがボケてもセリスはつっこめそうにないから無理だろ。」
じゃあラドネイとシャナン。
スカサハ「ラドネイが漫才所じゃなくなるから無理だろうな。」
それじゃあマナとディムナ。
スカサハ「100%無理だね。」
決まりだな。君達はとりあえず他の埋め合わせが来るまでコメディ役。これでいいね?
スカサハ「ぐっ、本当に替えを用意するんだろうな・・・」
心配なく。
スカサハ「心配だな。まあいいや。じゃ、愚痴も言い終わったところで、俺は失礼するわ。」
ふう、嵐が収まったか。じゃ、この辺で。じゃあね。






今回新参のキャラの能力

名前

LV

HP

魔力

早さ

幸運

守備

魔防

体格 

移動

属性

アレス

25

11

10

10

成長率

90

65

35

50

45

50

装備:鋼の剣、手槍
クラス:ソシアルナイト
敵サイト

名前

LV

HP

魔力

早さ

幸運

守備

魔防

体格

移動 

属性

ゲイル

11

45

21

16

17

13

20

12

クラス:ドラゴンマスター
装備:銀の槍、スレンドスピア

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